第10回 文化庁メディア芸術祭 其ノ弐 「Save YourSelf !!!」

前回に続いて文化庁メディア芸術祭を取り上げるエントリーの2回目.
今回はアート部門で審査委員会推薦作品に選ばれた「Save YourSelf !!!」という作品.

審査委員会推薦作品という事なので,文化庁メディア芸術祭のオフィシャルサイトには詳しい事が書かれていないが,
こちらに作者の方が作ったと思われるページがあり,コンセプトについて語られている.
私がこの作品で驚いた事は,人間の平衡感覚を司る三半規管に作為的な影響を加える事が可能であると言う事だ.
インターフェースはリンク先の写真にあるようにヘッドフォンライクな代物で,
装着すると耳の裏側に電極が来るようになっている.
耳に装着する際にヘッドフォンの形状が適していたから流用しただけだと思われ,
実際にスピーカー部は無く,耳の周りの環状部分だけが残っている.
このインターフェースにある電極から三半規管に電気信号を送る仕組みとなっている.
芸術祭でのデモンストレーションでは,水の上に浮かべたボートを揺らし,
その揺れを自分の平衡感覚にフィードバックさせると言うものであった.
技術的には前後左右の揺れに対応する事が可能だが,今回扱っていたのは左右の揺れのみ.
水槽を手に持ち,水面のボートを揺らすと自分が揺れているような感覚に陥る.
しかし視線は水平を保っているので視覚と平衡感覚が一致せず乗り物酔いのような状態を起こす.
体験した感じではやりすぎると気持ち悪くなるようであった.
また,電極部分が乾燥していたかで接触が良くなく,電流が流れるたびに若干ピリピリした.
そして,装置を取ってからもしばらくは変な感覚が残った.
ボートの揺れ,傾きをフィードバックできると言う事は,任意に人の平衡感覚をいじれるというわけで,
これは凄い技術だなと感じた.
人間の感覚や運動の命令は電気信号である為,解析が進めば外部からの電気信号で自在に運動を操る事ができるという事になる.
電気信号で人の感覚や運動を操作してしまうと言う事は,確かにすごい事であるが,
場合によっては恐ろしい事である.
今回の体験で使い方次第でいろいろ出来るポテンシャルを秘めた最新技術の一端に触れた気がした.
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[文化庁メディア芸術祭]

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