痛み度を数値化する装置

痛みの程度というのは専門的には「痛み度」と言うそうです.
その痛み度を数値化する装置が出来ました.
「Pain Vision」: 痛みのレベルを数値化|Gizmodo Japan
知覚・痛覚定量分析装置「Pain Vision」|ニプロ株式会社
この記事を読んで真っ先に思いついたのは
かつてネットを騒がせた「痛みの基準はハナゲ(Wikipedia)」の世界が現実になった,
という事である.

まずは発表された痛み度測定装置の方から.
商品の正式名称は「知覚・痛覚定量分析装置」というもの.
測定の原理は痛みの最小値を設定した後,
その値を基準に対象となる痛み度を測定するというもののようだ.
明確に名称が出ておらず,若干仕様が異なっているが,
WBS4月2日のトレたまでこの「Pain Vision」と見られる装置が紹介されていた.
そのレポートによれば被験者は電流を流され,それにより痛さを測るらしい.
始めに痛さを感じるときの電流値を測定し,その後対象となる痛さと比較する電流を流すという手法だと思われる.
推測じみているが,上のような装置であるとするといくつか疑問が出てくる.
・痛みは比例するのか?
痛み度を数値化するとしているが,電流値を基準に数値化していると思われる.
基準となる電流値(痛みの最小値)と対象の痛みに対する電流値が単純に倍数で表されるかどうか疑問である.
痛み度をスコアにするに当たって,

痛み → 電流値 → 痛み度のスコア

という流れになっているはずであり,
この間の関係がどのようになっているのか分からない.
電流値から単純にスコアを算出しているとした場合,
そもそも痛みは電流の大きさに比例するのかどうかと言った疑問である.
しかし,ここは研究段階でフィードバックを重ねてうまい事やってる事も考えられる.
・各人の痛み度の整合性
Aという人の痛み度500とBという人の痛み度500は同じ痛さなのかどうかという疑問.
トレたまでは今後数値の一般化ができるような事を言っているので,やがてはできるのかもしれない.
もっとも数値の一般化がされなければ,「痛み度150以上の患者に対して鎮痛剤を出す」といった処方の仕方はできない.
ニプロの商品がどこまでできるものか分からないが,
数値による痛み度が人と一致しないのであれば個人での使用に限られる事となる.
それでも,前回の診療時と比較して痛みが和らいだかどうかなど利用価値はあるが….
・痛み度測定にあたっての痛み
現在の痛みを測定するために電流を流し,どれほどの痛みか測定するようだが,
対象となる痛みが大きかったときは,その測定は厳しいものになるのではないだろうか?
現在の痛みと,比較するために電流を次第に大きくしてき,やがて
「あ,この痛みです」
となるまで,電流を上げつづける訳だが,
「あ,この痛みです」
となったとき,被験者は元々の痛みの2倍の苦痛を味わう事になる.
測定対象である元々の痛みに加え,電流による同等の痛み.
洗濯バサミで挟まれた程度の痛みなら2倍になってもまだいいが,
激痛の場合はたまったものではないだろう.
そこが気になる.
明らかに痛い場合は数値化する必要がないのかもしれない.
製品特徴に「患者に痛みを与えることなく測定可能」とあるので測定方法が違うのかもしれない.

「Pain Vision」に対する話は以上で,次は痛さの単位ハナゲについて.
上のWikipediaのリンクにあるように,何年か前にネットで話題になったジョークである.
その話の大筋は

国際標準化機構(ISO)によって、人間の痛みの感じ方についての統一単位「ハナゲ」(hanage)が制定され、「長さ1センチの鼻毛を鉛直方向に1ニュートンの力で引っ張り、抜いたときに感じる痛み」が「1ハナゲ」と定義された、とするものである。ハナゲの痛みには性差や個人差はない事が発見されたため、ハナゲが痛みの単位に選ばれたのだという。

というもの.
元ネタは痛みの基準は鼻毛(やゆよ記念財団)にある.
私がこの話に出会った時は東京国際フォーラ ムで開かれた会議だとか,
hanage以外の単位についても書かれていたが,それらはオリジナルではなかったようだ.
痛さの単位「ハナゲ」は馬鹿げた話であるが,
痛さを測る事が医療において意外と重要であるという事を今回知った.
まだ,改善の余地はありそうなので今後の発展に期待である.

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